【感染性胃腸炎(ウィルス性胃腸炎)…おなかのかぜ?】水分の摂りかた。
【感染性胃腸炎(ウィルス性胃腸炎)…おなかのかぜ?】
いわゆる「嘔吐下痢症」が、増えています。今の時期は主に、ノロウィルスが、原因です。
おなかのかぜ?…日本では、「かぜ」は、「急性上気道炎」のことを言います。上気道とは、「のど」から「気管の上」まで、息を吸ったりはいたりするときに空気が通るところです。つまり、「のどから気管の手前まで」の間の感染性の炎症(主に、ウィルスや細菌の感染)のことを「かぜ」と言うと、決められています。(もっと先まで進むと、気管支炎や肺炎となります。)
一方、嘔吐下痢症は、お腹の(消化器の)病気であり、上気道の病気ではありません。「おなかのかぜ」と言うのは、「頭の腹痛」や、「ひざの腰痛」と言うようなもので、病名の定義上は、ありえない病名です。感染性の病気を何でも「かぜ」と説明して、済ましてしまおうとする、悪い習慣の名残のように感じてしまいます。(学生時代、もう28~30年前ですが、「何でも「かぜ」で済ましてしまうような、医者になるな」と、担当教官に言われた覚えがあります。)
ところで、前述しましたが、今、感染性胃腸炎の患者様が大変増えています。
感染性胃腸炎という診断名は、多種多様の原因によるものを含んでいます。細菌、ウイルス、寄生虫などですが、ここでは、冬に多いウィルス性、主にロタウイルス、腸管アデノウイルス、ノロウイルスの消化管への感染によって起こるウイルス性胃腸炎、いわゆる嘔吐下痢症のことをご紹介します。嘔吐、下痢、発熱、腹痛、頭痛、関節痛などが主な症状です。ノロウイルスの流行は11月頃から増加し始め、12月にピークとなり、次いでロタウイルスによる乳児嘔吐下痢症(白っぽい下痢が出るのが有名です)の流行が2月から3月にかけてピークとなった後、初夏までだらだらと続きます。
感染性胃腸炎は、ほとんどの場合、患者との接触(便、吐物など)や、汚染された水、食品によって経口的に感染します。特に食事前の石鹸を使った手洗い、うがいを励行し、日常的に清潔を保つことが重要です
さて、かかってしまったら。…
吐き気が強い時は何も口に入れず、しばらく安静にしましょう。水分補給、脱水予防が、治療の中心です。そのため、吐き気止めが使われることが多いようです。吐き気止めは坐薬と粉薬(ドライシロップ)、錠剤がありますが、内服薬は、それをのんだだけで吐いてしまうことがあるため、特に小児では、坐薬の方が無難でしょう。
ある程度吐き気が治まってきたら、イオン水(スポーツドリンクなど)を少しずつ飲みます。脱水状態でのどが渇いているからといって、決して、コップでゴクゴクと一気にたくさん飲まないように注意してください。これがまた、嘔吐を誘発してしまうことがあります。ペットボトルのキャップ1杯くらいずつ、小児なら、スプーンを使って、一口ずつ、と、言うのが安全です。2~3口飲んで15~30分ほどして、それが胃を通り過ぎたころに、次を飲みます。吐かずに、水分が通りだすと、今度はおかゆやおじやを少しずつ、無理をせず、食べてください。決してあせってたくさん食べないようにしてください。脂っこいものは、やめましょう。大抵の嘔吐は1~2日でおさまりです。
下痢はもっと長引く場合が多いのですが、そのうち治まってきます。便の中に、ウィルスがいますので、むやみに、下痢止めを使って、長く体内に病原体を留めないようにしましょう。